知人から面白い本だと紹介され本書を手に取りました。哲学史のテキストならまだしも哲学書には壁を感じており、壁を乗り越える意味も込めて読みました。
著者はオタク系文化はポストモダンの社会構造をよく反映しているとしており、ポストモダンの考え方を現代(当時)のオタク文化に当てはめることで分析を試みています。そこではオタクたちがコンテンツを鑑賞する方法を「データベース消費」と命名し、その枠組みをもとにオタクのみならず現代の日本人の思考方法そのものをも分析しています。最終的にはコジェーヴが定義した人間と動物の差異に基づいてオタクたちの行動が「動物化」していることを指摘し、書名の伏線が回収されます。
本書は論の運び方が(納得できるかどうかはさておき)非常に明快で内容を理解しやすく、整理された論説文の書き方になっています。具体例があまりにオタクオタクしており、その点も私には理解しやすい点です。また本書では思想家や評論家の論旨がしばしば引用されますが、そのたびに内容を咀嚼して本書の論の構成に位置付けて説明されており丁寧です。
本書で解剖されてしまった行動様式は一匹のオタクとしての私にも実感を持って理解できる部分が多く、自分の考え方の根源を考えるよい機会になりました。また、あまり詳細を知らなかったポストモダンに関しても少し知ることができ、現代思想の理解を深めるよい機会となりました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
1 哲学
- 感想投稿日 : 2024年2月26日
- 読了日 : 2024年2月27日
- 本棚登録日 : 2024年2月26日
みんなの感想をみる