少女は卒業しない

著者 :
  • 集英社 (2012年3月5日発売)
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3

朝井リョウくん、初めて読みきった。
実はしばらく前に「もう一度生まれる」を図書館で借りたとき、
1つ目の話を読んだところで進まなくなり、期限切れで返却したのだった。
20代の司書さんから、
「うーん、朝井さん、高校生や大学生の世代の人たちにはずいぶん共感を得ていて、
人気なんですけどね・・・。」
と残念そうに言われて、
あらら、高校生からかなり時間が経ってしまった私にはキビシイのかな?と思いつつも、
今度こそ!と手に取ってみた。

「もう一度生まれる」もそうだったけれど、タイトルと表紙に惹かれる。
前を一心に見つめ、自分の意志で選んで進んでいく女の子を想像させた。


廃校が決まった高校の卒業式の日に起こる7つの物語。


大勢に流されたり、その中にいっそ飛び込んでしまった方が楽な時もありそうなものだけれど、特有の「潔さ」と「青さ」を持った少女たち。
恋心や後悔、今まで言えなかったことに向き合い、節目となる1日に足あとを残す。
普段なら見逃してしまいそうな些細なことがらも一つひとつ掬いあげて、
きらきらと光の中に浮かび上がらせる。
そんな描写が、同世代の人たちの気分を表しているのだろう。

一番印象に残ったのは、「四拍子をもう一度」
好きな男の子の一番魅力的なところを、みんなに知ってもらいたいと考える女の子と
自分だけが知っている秘密にしておきたい女の子。

正直なところ、私は後者でしたね。
特に「一見・・・なんだけれど、実はこんなに・・・なんだよ!」みたいなのが、
かなり好きだったのを思い出した。
今は、むしろミーハーに「あの人のこんな素敵なところを最初に見つけたのは私!」と
おしゃべりする方が楽しいのは、「恋」から遠く離れた証拠でしょう。

そして、第6話に登場する"The long and winding road"
めちゃくちゃ懐かしい。
高2の文化祭でクラスで映画(ビデオ)を撮ったときのBGM。
結局大成功と言えない結果になったことを思い出し、ちくんと胸の奥が痛む。

甘美でほろ苦い。
涙を流しても、優しい風が吹いて頬を乾かす。
まっすぐすぎて、咽喉の奥がひりひりする。
照れくさく苦笑いする。

高校という閉じられた世界の中に存在する、
そこでしか味わえない気持ちや情景を切り取って表現するのが上手い人だなと思った。
自分自身が全く同じ気持ちを持てなくても、
たぶん同じ空間の誰かが感じていただろうと想像できる。
空気が伝わってくる1冊だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2013年3月17日
読了日 : 2013年3月17日
本棚登録日 : 2012年12月30日

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