吉行理恵詩集 (現代詩文庫 第 1期65)

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  • 思潮社 (1975年10月1日発売)
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感想 : 2

 兄妹で芥川賞取るんだから世の中は不公平、才能というのはもう遺伝的に決まっていてどうしようもないのではないかと思ってしまわないこともないがそれはさておきましょう。
 読み進める前に裏表紙を見ると安岡章太郎による種明かしがあって実際読み進めればその通りだから笑ってしまったんですが、吉行理恵の詩はとにかく感覚的な言葉の連なりであって、体質以外のものはあまり関係してこない感じ。日常言語に語彙を限定し、語りかけるような口調で一語一語を大切につないでいく。思い切っていってしまえば、少女がノートに書き溜めていた詩のようなもので、それが蒸留され、紙面いっぱいにぶちまけられたような、そんな瑞々しさと美しさを感じます。
 猫のモチーフが繰り返されるところなど、その元になっている実体験が同一であるばかりではなく、繰り返され方も殆ど同じなので、普通だったら退屈してしまいそうなところ、なぜか嬉しくなってくるあたりがこの人の一番の魅力なのかもしれません。
 芥川賞の受賞作は読んでいないのですが、この詩集に収められている二編の小説を読む限りでは、あまりこの人は小説は得意じゃなさそうな感じがします。やはり本人も仰っていることですが、口下手というのが小説だとはっきりと出てしまっている、そんな気がしました。

 余談になりますが、本書には「立原道造について」という随筆が収められていて、これは本来なら立原道造の詩について多少なりとも評論した内容であるはずなんですが、最初から最後まで立原道造への恋文みたいな内容になっていて、それがすごく微笑ましく思えました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2011年2月18日
読了日 : 2011年月
本棚登録日 : 2011年2月15日

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