アメリカの大罪 (小学館文庫 R に- 10-1)

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  • 小学館 (2003年6月1日発売)
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“日本人がこの邪教の御先鋒を担ぐ破目になっているのは、あっさりいって、あの対米敗戦のトラウマから、つまり精神的外傷から、脱け出せないでいるからにほかならない(215頁)”と西部氏は言う。

 実際にトラウマ(精神的外傷)なのか、もしくはトラウマと呼ぶべきなのかという事については、私は分からない。ただこんな話(↓)がある。

“今度の戦争で、仏印(いまのラオス、カンボジアの辺)あたりで捕虜になった日本人の話をきいてるみると、いままでの敗戦を味わったことがなかったから、みんなショックで、がくッっとまいってしまった。ところがフランス人に、「あなたの国は三千年に一度敗けたきりじゃないか。おれたちは三十年に一度ずつ敗けているんだ。なんでもないじゃないか......」といって笑われ、なるほど、と思ったという。...常に敗けている人の痛さよりも、常に勝っている人が敗けたときの痛さの方が、はるかに激烈なようである(升田幸三著 歩を金にする法)”

 ちなみに、この升田幸三(1918〜1991)というのは将棋のプロ棋士である。升田幸三は、GHQに呼ばれ、いろいろ質問を受けた事もあった。その質問には「日本の将棋というのは、捕虜虐待みたいなところがあるが、どうか?」なんていう質問もあったらしい。

“「升田幸三が日本の総指揮官で、勝った場合はどうするか?」というから、僕は捕虜を巣鴨みたいなところへ幽閉せずに、生かして使う、と答えた。将棋の精神である。だいたい戦犯という考えはおかしい。切り殺した方に罪がなくて、殺されたほうにばかりあるのはおかしいではないか。勝ち敗け関係なしに、勝ったほうにだって、何かあるはずだ。それでは勝てば官軍式で、ものの理にかなっていない、といった。(升田幸三著 歩を金にする法)”

 どうも日本人は、こうした気概を無くしたようである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アメリカ
感想投稿日 : 2006年1月29日
読了日 : 2006年1月29日
本棚登録日 : 2006年1月29日

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