死命

著者 :
  • 文藝春秋 (2012年4月25日発売)
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本棚登録 : 659
感想 : 126
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文体がとても好きな感じで読みやすかった。

殺人の手口がどれも「見知らぬ女の体を買い、行為中に殺害」なことと、「異性と行為中に相手を殺したくなるようになった直接の原因」がどうにも気持ち悪くて榊(とその両親)には嫌悪感しか抱けなかったです。
幼少期の榊の境遇には同情しますが、普通そんなことがあったら異性との行為自体嫌になるんじゃないのかな……と思ってしまうのは私が女だからでしょうか。
異性との行為に抵抗ないのは記憶をなくしてるせいかなと思ったけど、最後に本命の母親を殺そうとした時のセリフから見ても普通に母親のことも犯そうとしてるっぽいしなぁ。

澄乃が亡くなる前に蒼井に託した言葉についても釈然としない気分です。
むしろ蒼井が言った「嘘」の方が榊に対して澄乃が言いそうな言葉だと思ったんですが、実際に彼女が「最後に信一に何かを残したい。伝えなければならないことを」と必死に吐き出した言葉はまるで榊を突き放す言葉のようで意外でした。
榊が殺人犯と知って、榊に対して完全に愛想が尽きちゃったからあんなこと言ったんでしょうか。
もちろん殺人はいけないことだし失望するのも無理はないかとは思うけど、少し前まで愛していてお腹に子供までいるのに「あなたに会わなければ良かったと伝えて」が最後の伝言っていうのもなんだかやるせないというか……。

蒼井、矢部、岩澤の刑事3人の関係が少しずつ良くなっていくのが良かった。
決して馴れ合うわけではないけど、プライドの高い男性同士が徐々に信頼関係を取り戻して歩み寄っていく様は本当にかっこよかったです。


このもやもやした気持ちの正体が上手く吐き出せないのがもどかしい。
最後に蒼井がついた小さな嘘はたしかに少しは榊の心を蝕んだようですが、たったそれだけの事があれだけの人間を殺害した彼への罰なのか、と思ってしまう…… うーん。
ならどうなって欲しかったのかと聞かれると答えられないのですが。

でも、面白かったです。
また薬丸岳さんの本を読んでみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: サスペンス
感想投稿日 : 2018年3月11日
読了日 : 2018年3月5日
本棚登録日 : 2018年3月5日

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