ししりばの家 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2020年1月23日発売)
3.89
  • (85)
  • (171)
  • (103)
  • (8)
  • (2)
本棚登録 : 1501
感想 : 136
3

今回もページをめくる手が止まらず、ほぼ一気読み。『ずうのめ』と比べると構成も仕掛けもシンプルに感じてしまうが、逆にわかりやすいかもしれない。登場人物も少ない。
子供の頃、同級生橋口の家だった廃墟を訪ねて以来、頭の中に砂が詰まったようになりまともな日常生活が送れなくなった僕(五十嵐哲也)。多忙な夫と結婚し孤独に追い詰められているわたし(笹倉果歩)が幼馴染の平岩敏明と再会し、平岩家へ招かれるうちに怪異に巻き込まれていく。この二人のパートが交互に描かれる構成。
ずばり怪異の正体は「砂」である。家の中を覆い尽くす砂・砂・砂……解説の三津田さんも書いていたが、私も安部公房の『砂の女』(映画)を思い浮かべた。それだけだと何が怖いのかという感じだが、砂によって侵され操られる人物たちの不気味さを例のバグった文章で描いているのだ。怖い。
何より一つの理屈(理?)で動いている「ししりば」という存在はとても強力で、対峙する琴子さんも自爆覚悟で対峙するしかない。絶体絶命に思われたが、拍子抜けしてしまうほどの弱点がわかってからは一気に解決。
それでもあいかわらず「人間怖い」な部分もちゃんと描かれていて最後まで抜け目ない。
今回はかつて哲也とともに怪異に遭ってから覚醒した琴子さんと哲也がタッグを組んで「ししりば」と対決する。時系列的には「ぼぎわん」の前らしい。銀(犬)がちゃんと長生きできて良かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ホラー
感想投稿日 : 2024年2月26日
読了日 : 2024年2月26日
本棚登録日 : 2024年2月26日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする