軽トラの本

著者 :
  • 三栄書房 (2017年5月1日発売)
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感想 : 9
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いやはや面白い本だった。少し前に読んだ『スーパーカー誕生』の著者による本だが、あちらがその「取っ付き」に反して、読み終えるのにかなりの気力を要したのに対し、こちらは軽い驚きに満ちた納得感が、一気読みの背中を押してくれた。

お客様にとって軽トラとは「選ぶ」ものではなく「代替えする」もの…ゆえに、モデルチェンジで1つでも「悪い」とされる点があることは許されない。ネット全盛とされる今日だが、農業・漁業コミュニティでの「口コミ」による情報伝播力さらにいえば破壊力は、ネットのそれとは比べものにならぬほど強力だ。

一方で、衝突時の安全基準に準拠するための設計変更は不可避。市場規模は限られたゼロサムゲームの中、ワンモデルの寿命が乗用車の何倍(平均10年)にもなる軽トラ設計陣へのプレッシャーは、想像を絶するものがある。

わがままなユーザーは、そのくせ「同じものを買ってる気持ちになるのは嫌なので」デザインには斬新さを求めるのだと。

首位ダイハツがシェア45%、続くスズキが30%、ホンダのアクティは10%に満たないながら、独自性の高い設計と、乗用車との混流生産によるコストダウンで存在感を確立している。ちなみに、同車のエンジンは横置きミッドシップ、ランボ・ミウラと同じである。

スバル・サンバー編では、牛を荷台に載せたら、荷台が凹んだクレームから始まる。一頭で600kg、脚一本で150kgが一点に集中すれば凹まないわけがない!

タイヤ、エンジンなどの各論に触れた後の最終章は、再びスバルサンバーの赤帽専用車。チョイ乗りが大半の他の軽トラと異なり、平均年10万キロを走るこの車は、設計思想からして、他とは全く異なる、他車をベンチマークすらしていなかったという。

1台100万円しないものが年間20万台、奇しくもランボルギーニ社の年間売上1790億円(2018年、販売台数は3千台ほど)とほぼ同じ規模というのが興味深い。

「#軽トラの本」(三栄書房、沢村慎太郎著)
Day212

https://amzn.to/2DAHNH1

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年8月9日
読了日 : 2020年8月9日
本棚登録日 : 2020年8月9日

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