本書を通じて韓国政治・韓国社会の思いが少し分かったような気がします。日本と韓国の政治的な折り合いの悪さは、近隣国の常だといえば簡単なことですが、お互いへの理解不足は大きくあると思います。特に日本は第2次世界大戦後の1960年代あたりから今日まで韓国(というかアジア全般に対して)に無関心、あるいは見下すような風潮があるのは間違いないと思います。韓国が経済発展し、あるいは民主化してきた中でなぜ日本バッシングを続けるのか、韓国の粗探しや負の感情で対応するのではなく、まず理解する必要があります。ここで重要なのは今日の韓国社会は日本以上にゆとりがなく競争原理が蔓延する病理に蝕まれていることを見逃すことはできません。そして日本を擁護する論調が韓国内では出しづらいこと、ガス抜きに日本バッシングが許されるだろうという「空気」などです。
従軍慰安婦や徴用工の問題、何より日韓請求権協定に対する日本側の認識は確かに正しいんだろうと思います。ただ人は正しいものを提示されただけでは、動きません。感情の生き物なんです。ましてはかつて日本は韓国を侵略した国です。そんな国に反発の気持ちが残り続けるのは当然でしょう。ここを理解して韓国側が対話を拒むのであれば、積極的に歩み寄る必要があります。最後に本書で最も頭に残った後藤田元官房長官の言葉を頻用したいと思います。「この地上に、戦争の記憶を持った中国や韓国の人が一人でも残っているうちは、我々は憲法快晴の話を持ち出してはいかんのだ」
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
国際
- 感想投稿日 : 2020年7月29日
- 読了日 : 2020年7月26日
- 本棚登録日 : 2020年7月3日
みんなの感想をみる