人生解毒波止場 (幻冬舎文庫 ね 1-2)

著者 :
  • 幻冬舎 (2010年12月1日発売)
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本棚登録 : 175
感想 : 10
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根本敬のエッセイが再び文庫化されたので読んでみたが、もうお腹いっぱいかな。
所謂「触れてはいけない人」に接触して、その生態を報告するというエッセイ。
でもね、当時は面白かったかもしれないけど、今ではやはり古くなっている。
とち狂った政見放送をしたインディーズ候補者にネット媒体が取材なんかすると、実はまともな人であんまり面白くなかったりするケースを見てきたから。
この本に登場する村崎百郎はゴミを漁って、それをネタに鬼畜ライターとして活動していたのだが、統合失調症の読者に刺殺されるという事件が今年起こった。
彼の死後、その素性が明らかになったが、公表していた経歴は全くので出鱈目で、有名私大卒の編集者だったというのもまさにこのパターンではないか。
それでもまだ第1部は読めるのだが、第2部の日記は下らな過ぎて出版するレベルにないと思った。
「また知恵遅れの集団と出くわした」ことをたった数行書くことに何の意味があるのだろうか?
人間生きていれば誰だってそういう人としばしば遭遇する。
ただいちいち報告しないだけで。
僕の知人女性にこの手のサブカルに詳しく、そっち系の施設で働いていたりする人がいるのだが「ああいう人たちとクリスマスカード作ったりするの、しんどいだろ?」と訊くと、「いや、そういうのは仕事としては全然楽」なのだそうだ(因みにこの質問はイギリスのバンド、ザ・スミスの歌詞より剽窃)。
この本でやっていることは「福祉の仕事として楽」なクリスマスカードに書かれた内容を晒して笑っているようなものでしかない。
因みに上述の鬼畜ライター村崎百郎を刺殺した犯人は、元々この著者である根本敬を狙ったものだそうだ。
その後日談も文庫版解説としてしっかり載っているのだが、果たしてこれもどこまでがリアルなのか少し疑わしいと感じている。
サブカル自体にはまだ可能性はあると思うけど、時代背景と共に転換期を迎えているんだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ・ノンフィクションなど
感想投稿日 : 2011年1月19日
読了日 : 2011年1月19日
本棚登録日 : 2011年1月19日

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