日本中世に何が起きたか 都市と宗教と「資本主義」 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2017年3月25日発売)
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人間が所有できない神仏の領域=無縁。俗世界と縁が切れたがゆえに物と物は交換取引できる。無縁こそ商業と金融の発祥地。このように宗教と経済を不可分に結び付けた網野史学の要諦を講演録や対談からまとめた内容。被差別民についても斬新な視点を提示している。かつての遊女や乞食、河原者は神仏・天皇に仕える芸能民=非農業民であり、蔑視の対象ですらなかった。むしろ神聖を帯びた存在として一般の平民、農民から特別視されていた。が、13世紀以降、銭の流通による貨幣経済の発展と戦乱によって神仏・天皇の権威が低下し、伴い芸能民たちは穢れた存在、悪や悪党とみなされ差別の対象となったという。彼らの救済に乗り出したのが、いわゆる鎌倉新仏教の開祖たちで、鎌倉という時代に優れた宗教家が輩出した理由がここにある。と、非常に刺激に満ちた網野史学の歴史は大変おもしろい。ただ、著者の「日本の歴史をよみなおす」など他の著作を読んだことがある人は、本書と重複する内容が多いので読む必要はないかもしれない。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2017年4月8日
本棚登録日 : 2017年4月4日

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