将棋の子 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2003年5月15日発売)
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感想 : 187
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将棋のことはさっぱり分からんが、ノンフィクションを読んで久しぶりに心揺さぶられた。
年齢制限がある奨励会の仕組みはもちろん、プロ棋士を目指して競争の日々を送る青年たちとその後を描いた内容。
初めて知ることばかりだった。将棋しか知らない青年たちが年齢という壁に突き当たる。勝負は勝ち負けの非情な世界。敗れた者たちは奨励会を止めていく。立ち去らねばならない。ある日突然、社会に放り出される。学歴も資格もなく、働いたことすらない彼らに待ち受ける苦難や挫折。非情な現実のなかそれでも生きていけるのは、奨励会での日々が青春のなか何かを信じ、「名人」という神に限りなき近い場を目指して、何かを賭けて、無我夢中に、一心不乱に、頂きに駆け上がっていこうとした。その記憶があるから。奨励会での厳しい競争の日々がその後の彼らの生きる営みを支えている。読みつつ胸に迫るものがあった。

- 将棋は厳しくない。本当は優しいものなのである。もちろん制度は厳しくて、そして競争は激しい。しかし、結局のところ将棋は人間に何かを与え続けるだけで決して何も奪いはしない。-

奨励会を去った青年たちの物語を読み終えると、本の終わりこの文章と出会う。これは決して将棋の世界だけではないだろう。勝負の世界はどれも優しい。
その事実に深く感銘した。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2016年1月30日
本棚登録日 : 2015年12月29日

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