政治改革再考 :変貌を遂げた国家の軌跡 (新潮選書)

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  • 新潮社 (2020年5月27日発売)
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90年代から取り組まれた政治改革の過程と帰結を検証し考察した内容だが、領域横断的、俯瞰的記述で一般向けではないかもしれない。
ここ30年に渡る様々な領域における一連の政治改革を『実質的意味での憲法改正』と評していて、膝を打つ思いだった。

一口に政治改革と表しても多岐に渡る。選挙制度改革(小選挙区比例代表並立制)。行政改革(省庁再編と内閣機能強化)。日銀・大蔵省改革(日銀法改正と大蔵省の影響力低下)。司法改革(法科大学院と裁判員制度)。地方分権改革(地方分権一括法)。これは30年前の政治風景と全く違う変化を起こす。
政治改革を支えた時代認識と理念。著者はそれを近代主義右派のプロジェクトと総括する。「近代主義」とは、自律的な個人が社会を作り合理的に行動するなかで、集団化や意思決定において、より合理化することが望ましいとする考え方を指す。
バブルと冷戦後の国内外の環境変化のなか、変化に即応できる統治機構の応答能力の向上と、新たなルール作りへの時代認識と熱気が体制内統治者たちに共有されていた。そうした時代認識と「近代主義」が重なった近代主義右派の理念が政治改革の基底にあったという。広範囲に及ぶ改革の理由もここにある。

さて、政治の風景は変わった。内閣機能強化は官邸主導として今日定着している。選挙制度改革は党総裁の力を強めた。司法では行政官僚制との関係では自律性が強まった。地方分権改革後の中央と地方の意思疎通には依然課題が残る。本書は総花的な内容だが変貌を遂げた「国のかたち」を知ることができる。

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カテゴリ: 政治
感想投稿日 : 2021年11月23日
本棚登録日 : 2020年11月4日

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