ウクライナ戦争と米中対立 帝国主義に逆襲される世界 (幻冬舎新書)

  • 幻冬舎 (2022年9月21日発売)
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ロシアのウクライナ侵攻により混沌とする世界秩序。軍事・経済両面で拡大を広げる中国。今後の世界勢力図のゆくえを国際政治の専門家5名に著者がインタビューした対談記録。
アメリカのリソース不足ゆえにロシアと中国の二正面作戦はできない。だから最優先課題として台湾有事に米軍のリソースが向けられていたが、ロシア×ウクライナ戦争が起きて米国はウクライナを支援し、ロシアと対峙せねばならなくなった。台湾への関与が先細る懸念のなか、その米国の足元と動向をじっと観察し計算している中国の習近平。中国の核弾頭は今後数年のうちアメリカの核と同数か上回るようになるという。台湾海峡での実弾演習訓練も格段に増え航空兵力の増強が著しい。加えて、米ソのホットラインなどのコミュニケーション手段や核・軍備管理の経験の蓄積が米中間では全くない。偶発的な事故や小競り合いが米中対立の大惨事となる危険性は米ソ冷戦期より高い。台湾有事は時間の問題という専門家たちの主張と危機感が行間から伝わってきた。

世界の多極化か。それとも米中対立を軸に力を剥き出しにした権力政治の復活か。どちらにせよ19世紀的帝国主義時代に回帰する。スマホをもって19世紀に戻るのは嫌だなと思うが、専門家たちの見解を読むと先行きは暗い。日本の「戦後」もどこかで終わるかもしれない。そう覚悟しなければならないときがくる。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 政治
感想投稿日 : 2022年11月19日
本棚登録日 : 2022年10月1日

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