私の仕事: 国連難民高等弁務官の十年と平和の構築

著者 :
  • 草思社 (2002年11月30日発売)
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理想主義に走らず現実を直視し、人道の見地から権力側に要求し、応えてもらい、各国の政府を取り込んで難民を救おうとする姿が見えます。難民を作っているのは人間の悪い本性によるもので、酷いと思うが、同時に難民を救おうとする多くの人たちがいることに慰められます。五千人(当時)のUNHCR職員に感謝。第Ⅱ章が本書の中心だと思います。▼「冷戦後の世界と難民(1992年)」(P118)冷戦の終焉が、新たな国際秩序の樹立をもたらすのではなく、むしろ地域紛争や民族対立が繰り返される不安定な時期を招来させていることを示唆するものと思われる。難民の動向に三つの兆候が見られる。第一は(冷戦の終焉とともに)地域ないし国内紛争が解決に向かい、国外にいた難民の故国への帰還が大幅に進展すること。第二は、長年にわたる米ソ対立によって抑圧されていた民族的対立が国家の崩壊をもたらし、新たな難民の発生を触発すること。第三は、政治不安と貧困から逃れようとする難民や移民が西洋諸国へ大量に移動することである。これらの流れに国際社会がどのように対応できるかが、今後の国際社会の帰趨を制する鍵となろう。・・・しょせん人間の流出の原因となる国々の政治・経済の安定を図る以外の道はないであろう。▼「フツ族の先般難民も保護すべきか」(p172)人間の集団というものはどろどろした恨みを持ち、それは人間の本性から発生するもので、どんなに酷いものか思い知らされた。

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感想投稿日 : 2019年11月13日
読了日 : 2019年11月13日
本棚登録日 : 2019年11月13日

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