愛着障害 (光文社新書)

著者 :
  • 光文社 (2011年9月16日発売)
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感想 : 251
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 学校で、愛着障害じゃないかと疑われる子がいて、
 先日その子が廊下で、ものすごい勢いで女の子を追いかけていたものだから、

 「やめなさい」
 と前に立ちはだかったら、見事わたしと激突。
 ブチ切れられる。

 わたしの腕に殴りかかり、
 「ふざけんなよお前。お前なんか教員に向いてねーんだよ。教員辞めろよ。お前みたいなのが舐められんだよ。誰もお前の言うことなんか聞いてねーんだよ。クラス全員お前の言うことなんか聞いてねえじゃねえか。全員に舐められてるからだろうが。むいてねーんだよ。やめちまえ!」

 というようなことを言われる。

 あんまりの言われようだなぁ。でもそれ、本当だよなぁ。この子は衝動性が強いから、今思ったことを口走っているけど、普段思ってるけど口にしないだけで、そう思っているんだなぁ。あーツラ。

 そう思ったら、涙が出てきそうになる。

 それ、クラスの子が全員聞いていて、教室に入ったら、しーんとしていて、「先生、そんなことないよ。」とは言わなかったけれど、わらわらわたしの周りに集まってきては、(お弁当の時間だったので)「先生、卵焼きは砂糖と塩、どっちが好き?」とか、「先生、お弁当ちょっと分けてよ。」とか、普段絶対言わないことを言ってきた。

 翌日の日記に、「担任が先生でよかった。」と、わたしにしかできなかったことを、いっぱい書いてきてくれた子がいて、

 久しぶりに、堰を切ったように泣いた。



 「私は教員に向いていない。でも、今ここで働かせてもらっているのだから、わたしにできることを精一杯やろう。」


 そう思って、8年間教員をやってきました。

 でも「お前なんかお呼びでない」と言われ、
 8年間をすべて否定されるようなことを言われ、


 そうか、やっぱりそう思われているのか。わたしなんかいないほうがいいのだ。・・・でも私は、やめたところでいったいこれから、どこへ行ったらいいのだろう。

 そう思わされている今。


 わたしは、「担任が先生でよかった。」と、いってくれる子を支えに、頑張って行っていいものなのだろうか。



 分からない。



 愛着障害。


 この本の巻末に、愛着診断のチェックシートがあった。

 わたしは強い回避性愛着障害だった。

 思い当たる節はある。幼いころから、父親との関係が良くない。今も良くない。

 「この人は、子供なんかほしくなかったのだろう。」

 そう思って今を生きている。

 納得のいくストーリーを、そこからいくらでも作り出すことができる。


 そこになぞらえて言うのであれば、
 わたしは、人を育てるという職業を通して、

 自分を癒そうとしているのだろう。

 絵を描いたり、本を読んだりして、自分の世界を守ろうとしているのは、

 どこにも安全な基地が自分の中にないからだろう。


 男の人と、うまく関係を作れないのも、そこが原因なのかもしれない。


 そこから、自分を自分で育て、癒すきっかけを持てるのであれば、


 わたしは、この愛着障害と向き合うべきなのだろう。






 わたしを、


 私のすべてを否定する存在がいる場所でなお?



 来年度が始まる。

 がんばれる気力が今、


 大幅に損なわれている。


 回復できないまま、また私は自分を奮い立たせて1年を始めるのであろうか。





 誰か、助けてほしい。



 


 …きっと、わたしに食って掛かってきた子も、
 そう思っているのだろう。



 誰か、自分を救ってほしいと。






 でも今、わたしは沈没寸前の小さな船のようなもので、


 たくさんの人が救いを求めてきたら、

 自分がつぶれてしまいそうな気がする。






 誰か…






 半年だけ、頑張ってみよう。
 あと半年だけ、生きてみよう。
 できるだけ、人の役に立てるようにこの身を捧げてみよう。

 もしがんばれたら、もう一ヶ月だけ、生きてみよう。

 もし、だめだったら、そこまでだ。





 だれにも必要とされなくても、生きられるものかと思っていたけれど、



 だれか一人にでも否定されることが、生きる気力をこれほどまでに削がれるものなのかと思う。


 半年だけ。がんばって生きてみる。
 この痛みを忘れて、にこにこ笑って生きている自分を、心に描きながら、頑張る。

 「わたしなんて、生まれてこなければ良かった。」
 そう思うことが、どれほどつらいことか、分かって上げられる人間でいられますように。

 「あなたがいてくれてよかった。」
 一人でも多くそのことを伝えられる人間でいられますように。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2015年3月23日
読了日 : 2015年3月23日
本棚登録日 : 2015年3月23日

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コメント 2件

よっちさんのコメント
2024/02/04

2015年に書かれたレビューなので・・・今お元気に過ごされていることを祈るばかりです。

Rinoさんのコメント
2024/04/11

今これを読んでいる私も救われています。今何よりもお辛いと思います。誰かに助けを求めてくださいね。あなたが生きていきたいと思える何かに出会えることを信じています。

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