異常探偵 宇宙船 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社 (2018年2月21日発売)
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本棚登録 : 135
感想 : 20
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いわゆるメタ小説に近い手法、狂言回しの進行が入る中で、登場人物は全員記号で名付けられる。まずこのあたりは人によって好みが分かれると思うが、本作品では非常に効果的に作用している。

まず人物設定が際立っている。それぞれにやや突飛とも言えるキャラクター付けがなされているにもかかわらず、その心理描写は秀逸である意味で生き生きと小説の中で動き回る。記号であるにもかかわらず、その関係性は現実の人間同士を上回る濃密さである。

ストーリーもある意味では普通、そしてその舞台も五反田の街並みが頭に浮かぶくらいリアルである。このようにリアリティ溢れる中で記号が繰り広げる現実離れした物語は奇妙であるが心地よい。この感覚が好きな人にはこの小説はうってつけである。

これはまるで舞台のようだ、と思っていたらそれは当然の話で、筆者の前田司郎さんは劇団五反田団を取材する劇作家でもある。最後の宇宙船のこのセリフで幕が降りる、という感じだろうか。

「この世は不良品なのよ。不良品のない世界なんて、地獄だわ」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年10月30日
読了日 : 2021年10月28日
本棚登録日 : 2021年10月28日

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