(株)貧困大国アメリカ (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2013年6月28日発売)
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感想 : 173
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本書を読むと、アメリカという国がそら恐ろしくなった。アメリカの政治、行政、マスコミの全ては、富の集中する多国籍企業に買収され、操られている。多国籍企業はには公共のためという発想がないから、ひたすら営利を追求して富の蓄積を図り、その資金で徹底的なロビー活動を行うから、益々富めるようになり、その代わりに没落していく中間層。自由の国アメリカ、民主主義の旗頭、平等のチャンス、アメリカドリーム等はすべて幻想になってしまっている、という。
自国のみならずメキシコやアルゼンチン、インドなどの国々で中小農家を種と農薬で支配するアグリビジネス、教育への競争原理の導入と民営化によるコストカット、軽犯罪を含めた犯罪の厳罰化と囚人を使った刑務所ビジネス等、本書が描いている事は真実とは思えないほど余りにもえげつない。
NAFTAは、結局投資家や多国籍企業を利するだけだったとのこと。とするとTPPもその恩恵に与れるのは、一部日本企業を含む多国籍企業と富める投資家だけということになる。推進役であるはずのアメリカの国内でTPP反対論が喧しいのもよく分かる。
アメリカをこのように悲惨な状況にしてしまった背景には、何といっても、湾岸戦争やイラク戦争の戦費負担による財政破綻と規制緩和・民営化・市場原理の導入による徹底した効率化が利にさとい営利企業を太らせてしまったことや、不法移民による治安の悪化などがあるんだろう。それにしても、こんな状態で国が長く維持できるのだろうか? 中国のことを心配している場合じゃないのかも。
著者は、世界中でコーポラティズムが進行しているという。日本も例外ではないだろう。大企業と国民の利害が対立する時代にあって、日本の先行きも益々不安だなあ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養
感想投稿日 : 2016年10月16日
読了日 : 2016年10月16日
本棚登録日 : 2016年1月5日

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