日本で初めて地下鉄を作った「地下鉄の父」早川徳次の奮闘、そして浅草ー上野間の切開覆工式の地下鉄工事の苦労の数々を描いた快作。シャープ創業者と同姓同名とは(ただし、シャープ創業者はとくじ、地下鉄の父はのりつぐ)。
浅草ー新橋は徳次が掘って(元々は浅草から新橋経由で品川まで掘る予定だった)、渋谷ー新橋は後発の五島が掘って、すったもんだした上で両線を繋げたという経緯、全く知らなかったな。
資金力にものを言わせた五島慶太の強欲ぶり。まあ、競争激しいビジネス界における全うなビジネス活動ではあるのだが、ちょっとなあ。苦労に苦労を重ねたパイオニアが報われず、2番手以降の追従者がおいしい思いをする。このパターン、よくあることだがちょっと悲しい。歴史に名が残るのはパイオニアの方だとしても、それでよいのだろうか?
東京の地下鉄の場合は、戦争直前ということもあり、地下鉄事業は結局国に召し上がられ、両者痛み分けとなったようだ(そして営団が創設された)。地下鉄を利用する際、こうした過去の歴史に思いを馳せるのもいいな。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史小説
- 感想投稿日 : 2023年7月4日
- 読了日 : 2023年7月4日
- 本棚登録日 : 2023年7月2日
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