小さいおうち (文春文庫 な 68-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (2012年12月4日発売)
3.87
  • (473)
  • (770)
  • (515)
  • (73)
  • (16)
本棚登録 : 5533
感想 : 690
4

中上流家庭に住み込みで働く女中(家政婦)の視点で、戦前から終戦にかけての時代の移り変わりを描いた作品。第143回(2010年上半期)直木賞受賞作。

昭和5年、山形で尋常小学校を卒業したタキは、口減らしのため、東京の家で住み込み女中として働くことになった。働き者で機転が利き、料理上手なタキ。初めは小説家の家へ入ったが、平井家に移ると、嫁にも行かず「一生、この家を守ってまいります」と宣言するほどに、平井家に馴染んでいく。が、やがて戦争の影が…。そして時子と板倉の仲に心を痛めるタキ。

当時の庶民は、限られた情報に踊らされて、事変病に戦争に対してかなり楽観的・従順だったんだろうなあ。そして気がついた頃にはもう泥沼。この辺りをタキの甥の息子(健史)に突っ込ませている辺り、上手いな。

本作には、謎めいた部分がある。時子の親友の睦子が語った、睦子もタキも男女相愛以外の第三の路をゆくことになるかもしれない、という言葉。そして、健史が想像する、タキが時子の手紙を渡さなかった「全く違う理由」。同性への片想いの感情(同性愛)を匂わせるが、 何だかしっくり来ない。同性への強い憧れ、くらいかなあ?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(その他)
感想投稿日 : 2022年3月24日
読了日 : 2022年3月23日
本棚登録日 : 2022年3月22日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする