アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?

  • ダイヤモンド社 (2012年5月18日発売)
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感想 : 20
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本書は、「イスラエルをこれほどまでに革新的で起業家精神あふれる国にした原因は何か」を解き明かした書。

読み終わっての感想は、イスラエル恐るべし、の一言に尽きる。翻訳のせいか、結構読みにくいのが玉にキズだが、内容はかなり深いと思う。

まず、イスラエルの建国からして、半乾燥の不毛の地にテクノロジーで立ち向かった、起業家的国家建設だった。

そして、イスラエルの地に集まってきた人々は多種多様であり、「単一民族という概念の対極にある……文化、言語そして習慣を世界の隅々から持ち帰ってきたいわゆるディアスポラ(離散していパレスチナやイスラエル以外の国に住んでいたユダヤ人)の、一神教を信じる人種のるつぼ」となり、社会に活力を生んだ。そして、その多くが迫害を逃れてやってきた難民・移民であったため、ゼロからやり直すことを厭わない、チャレンジ精神と粘り強さを発揮した。

このような事を背景として、フッパー(「ずうずうしさ、恥とは無縁の厚かましさ、厚顔無恥、信じられないほどの゛度胸゛、無遠慮しかも傲慢」を表す言葉)など、下から上に遠慮なくもの申すことを当たり前とするイスラエル人気質が培われた。このような気質が、ビジネスや研究開発において常識を撃ち破る発想を産み出しているという。

そして、何といっても特徴的なのが徴兵制。イスラエル国防軍(IDF)は様々なエリート部隊を創設して人材を鍛え上げつづけている。緊張した中東情勢の中で、権限を持たされ、実践に駆り出される兵士たちが尋常でない経験を積んでいることは容易に想像できる。「イスラエルでは、どういうわけか学歴よりも軍歴の方が重視」されるというのも実に合理的で頷ける。また、兵役時の絆がビジネスにおける人的ネットワークとして財産になるという。

資源もなく、国内市場もなく、周辺国からのボイコットにあって遠国への輸出でしか商売ができない、常に紛争を抱え、安全保障リスクがとても大きい国。そのようなイスラエルの逆境が、却って創造力を掻き立て、ICTの分野を始めとする先端分野のイノベーションを推進した、ということも言える。

著者は、「建国者の愛国主義や意欲、絶えず続く欠乏と逆境に対する意識、そしてイスラエルとユダヤの歴史に深く根をおろしている好奇心や不安感などの融合したマッシュアップこそが、今のイスラエル人のさまざまな意識に強い力を与えている」という。

まあ、イスラエルにおける起業家精神の源泉は、日本には無いものばかり。日本は基本的に安定志向の内向き社会だからなあ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス
感想投稿日 : 2018年7月16日
読了日 : 2018年7月16日
本棚登録日 : 2018年7月13日

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