とにかく学生運動がお盛んで教員や学生達は思想闘争に明け暮れ、当局からは睨まれ続け、アラブの思想的指導者やテロリストの親玉を多数輩出してきた混沌の最高峰カイロ大学。かつてカイロ大学に2年ほど在籍したことのある著者が、そのリアルな姿を描き出した書。
イスラム思想・アラブ近代思想をリードしてきたカイロ大学について語ることは、アラブの思想史を辿ることでもあるようだ。
第7章カイロ大学留学体験記が圧巻。著者の無鉄砲で破天荒な半生、凄いな!
エジプト人のアイデンティティは、「・エジプト人であること ・アラブ人であること ・イスラム教徒またはキリスト教徒であること ・アフリカ人であること」の4つなんだとか。カイロ大学に象徴されるエジプト社会の混沌の原因は、この複層的で複雑なアイデンティティにあるのかも。だとしたら、社会の混沌が収まりを見せることは当分はなさそうだ。
カイロは世界一眠らない街(「カイロっ子が本格的に街に繰り出すのは夜中の1時過ぎ」)、そして世界一(二?)眠れない街(「午前7時半のカイロ中心街の平均騒音は90デシベル」)、お砂糖が溶けきれずに沈殿するお茶「スッカル・ジャーダ」…。カイロ、恐るべし。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
世界史
- 感想投稿日 : 2023年1月31日
- 読了日 : 2023年1月31日
- 本棚登録日 : 2023年1月30日
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