タリバン 復権の真実 (ベスト新書)

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  • ベストセラーズ (2021年10月20日発売)
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感想 : 10
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読んでいて頭痛がしてくる本。
タリバン政権を西欧側ではなく向こう側から評した本が読みたくて購入。タリバンの声明の邦訳が一次資料として載っており、民主主義とは宗教より個人の自由を重視する西欧文明の価値観でありイスラームの教えを基盤とするアフガニスタンとは相容れない、と思想面での根本的な断絶を示しており、こりゃ分かり合えんわ、と納得した。女性は身体的に男性と異なるのだから社会的な役割を区別するべきだ、という主張も、これに人権概念持ち込んだらけんかになるわ、とも。解説で内藤昌典同志社大教授がこの20年アフガニスタンはアメリカを侵略者としか見ていなかった、としているが、それもなんとなく腹落ちする。
こうして読んでいると宗教を基に国家運営するなんて破綻するでしょ、と思ってしまうが、日本からすればアメリカだって無宗教者が増えているとは言え未だにそれなりの割合の人が進化論を否定したり大統領就任時には聖書に手を当てているわけで、宗教を完全に切り離して社会を運営していくのは難しいのだな、と改めて思わざるを得ない。

最終章では21年のアメリカの撤退についてアメリカの敗北、中国の時代か、という論調を肯定的に載せているが、個人的にはあれは敗北ではなくより優先順位の高い懸案(中国、コロナ)に舵を切るためであり、ガニ政権に責任を押し付けられるという判断の上で行ったものなので、これを切り取ってアメリカの凋落とかグローバルパワーの衰退とかだと語るのは片手落ちだと思う。勿論綺麗に終わらせるに越したことはないが、その為に派兵期間を延ばしていれば今頃批判のタネになっていただろう。

それ以外は著者の主観で断片的な事象から結論を引っ張ってきており、参考にならなかった。アルカイダとの関係や内政など最も気になるところを語らずにタリバンは敬虔な信徒である、それに比べてアメリカはひどい、傀儡政権の腐敗はひどいと攻撃し、著者の実績自慢と他の研究者への個人攻撃まで飛び出す始末。
というか著者のWikipediaを読んであ、これ触れちゃダメな人だと理解した。ライトノベル作家って、、いやちょっと面白そうだけども。

冒頭の思想面の相違は面白かったのと、やっぱり本を選ぶときは著者経歴と出版社をちゃんと見ようねという改めての気づきを与えてくれたので星1.5。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年2月12日
読了日 : 2022年2月12日
本棚登録日 : 2022年2月12日

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