暴力団関係の取材を得意とする著者が、実際に福島第一原発での作業員として現場に潜入し、その実情を伝えたノンフィクション。福島第一原発の現場作業への作業員派遣絡みで暴力団がいかに関わっているのかという点に著者が着目して、実際に自ら作業員として雇用されて現場に入ります。
暴力団との関わりに関しての記述は書名の割に少なく、それよりも本書の読みどころは2011年の夏ごろの福島第一原発で働く作業員の日常や、作業の様子です。
作業を進めるために形骸化する除染のルール、作業員に現場の状況に関して緘口令を敷いたり、作業員にまともな放射線防護教育を実施しない下請け企業など、報道されない様々な実情が描かれています。
本来守られるべきルールや安全が形骸化している様子は誰もが「それはおかしい」と感じるはずです。しかしそうでもしないと作業が進まないという矛盾した状況に、原発の事故が他の災害や事故とは全く異なる種類のものだという事を考えさせられます。
専門用語などもほとんど出てこず、あくまで専門知識のない「一般の人」の視点で記述されているので、読みやすいです。
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カテゴリ:
ノンフィクション(社会)
- 感想投稿日 : 2016年7月8日
- 本棚登録日 : 2016年7月8日
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