ロウアーミドルの衝撃

著者 :
  • 講談社 (2006年1月26日発売)
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ビジネスマインド・ビジネスの心構えの本だと思ったら、どちらかというと政策提言の本だった。
本書の定義での「ロウアーミドル」とは、年収300−600万円クラスの層である。それに対し「アッパーミドル」が600−1000万円クラスである。そして2000年代、「アッパーミドル」が減って「ロウアーミドル」が増えている。

本書の重大な指摘の一つは、2000年代日本で起きている価格下落は、いわゆる「デフレ」ではなく、世界的な価格調整の一環であるという点。「デフレ」は悪ではなく、ましてやインフレ目標を据えてデフレの克服もできないということを前提に、政策を立案すべきだ、というのが著者の主張である。

つまり、規制を緩和・撤廃し、生活に必要な物価を下げよ、というのが本書の主張である。

8月24日読書開始8月29日読了。

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目次
序章 本質が見えない理由
第1章 日本の構造変化と「M字型社会」
第2章 ロウアーミドル時代の企業戦略
第3章 ロウアーミドルの意識改革
第4章 生活者大国への処方箋
第5章 本当の構造改革はこれだ
第6章 新しい繁栄の法則
 増税なしで財政再建ー税制改革”大前案”
 ボーダーレス時代の繁栄の条件
 日本人一人ひとりが改革者に

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メモ
第1章 日本の構造変化と「M字型社会」
p28 経済がカネを吸収しない時代。その理由は三つ。
 モノをあまり必要としない高齢者の増加(人口分布の変化)
 在庫を必要としないジャスト・イン・タイムの生産方式への転換(法人部門の変化)
 将来への不安からモノよりカネを握っておこうとする消費者心理(個人部門の変化)

資料
p45 民間給与実態統計調査(国税庁)97年 467万円ピーク、04年 439万円
p47 アッパークラス(1000万超) 4.9%→
 アッパーミドルクラス(600−1000万) 16.2%↓
 ロウアーミドル(300−600万) 41.5%→↓
 ロウアークラス(300万以下) 37.4%↑

p57 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 22歳時点=100とすると、収入のピークは
 1990年 500超 52−54歳
 2000年 400超 53−58歳
 2004年 400弱 53−55歳

第2章 ロウアーミドル時代の企業戦略
p82 なんちゃって自由が丘・・・高いセンスで低価格
・ナチュラルキッチン(100円ショップ)
・ZARA
・アイリスオーヤマ
・東急イン、京王プレッソイン東銀座

p90 ニューラグジュアリー・・・価格もセンスもアッパーミドル
・ドレッシングのピエトロ
・食用油の健康エコナ
・ハーゲンダッツ

第4章 生活者大国への処方箋
p154 農業補助金で穀物メジャーを買収せよ(4社で8.8兆円)

p161 土地は購入できる
(要約)「国内で米を作っていれば安心だ」という考えは幻想に過ぎない。海外の農産物の輸入がストップすれば石油もストップする。トラクターも灌漑用水のモーターも動かず、農作物を輸送するトラックや鉄道も動かない。作ることも輸送も出来なくなる。

p161 食糧安保と言うのなら、海外に土地を買って米を作ればいい(中略)。工業分野(天然資源分野も)では海外に資本投下して引き取り権をもらうのは当たり前になっているのだから、農業でも同じことをやればいいのである。

p163 市場開放すれば600万円で家が建つ
p169 役人を食べさせるだけの許認可制度
p173 年収600万円でも「アッパークラス」の生活を
p183 「淡い期待」を捨て、自ら行動せよ

第6章 新しい繁栄の法則
p252 アメリカ型の国家運営は、ネットワーク社会とも相性がいい。ネットワークとは、それを構成する個々の要素が自立していながら、それぞれがつながっている概念をいう。互いに競い合う一方で、情報や資源がやりとりされる関係だから、ひとつの要素が行き詰っても、他の要素が伸びてくる可能性がある。

p260 私は日本で年に何冊も本を書くかたわら、アメリカでも英語の書き下ろしで本を出している。私のボーダーレス理論や地域国家論などは、世界中の人々が知っている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年11月5日
読了日 : 2010年8月29日
本棚登録日 : 2018年11月5日

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