放射線医が語る被ばくと発がんの真実 (ベスト新書 358)

著者 :
  • ベストセラーズ (2012年1月7日発売)
3.98
  • (20)
  • (45)
  • (20)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 298
感想 : 48
5

放射線の専門家として、放射線被ばくと発がんリスクとの関係を解説した書。結論を言えば、福島に放射線による発がんリスクはほとんどないばかりか、発がんリスクを殊更に連呼し、不安を助長させ、避難生活を長引かせることこそが、寿命を短くすると警鐘を鳴らす。

中川恵一氏の名前をぐぐると「原発業界御用学者」というトンでもないレッテルを貼り、Amazonレビューでも誹謗中傷のレビューが相次ぐが、私は、本書以外に、放射線被ばくと発がんリスクを全うに扱った書を知らない。

チェルノブイリの原発事故の経過、広島・長崎の原発の経過も分析しており、その分析結果から、福島においては、発がんリスクがほとんどないと言える。2011年に出されたロシア政府によるチェルノブイリ事故の報告書では、放射線による発がんリスクそのものよりも、放射線リスクの閾値を下げ避難対象者を増やしたことによって、住民がかえって精神不安になり、寿命を短くしてしまっていることが報告されており、ロシア政府自ら、避難対策が間違いであったことを反省している。

しかし、現在、日本もチェルノブイリと同じ轍を踏んではいまいか?

「専門知識もないのに堂々と発言し、人々の「恐怖」や「不安」を煽ったものもの多く、この無責任さには放射線の専門医として、怒りを感じます」と著者は言うが、まさに同感である。

福島県の行政・議会関係者の方、ぜひ一読した上で、正しく判断してもらいたい。

<目次>
第1章 放射線の真実
(1) 放射性物質の正体とリスク
(2) 内部被ばくの真実
第2章 発がんリスクの真実
(1) 発がんの原因とは
(2) がんを防ぐためには
第3章 広島・長崎の真実,
(1) 広島・長崎のデータが語ること
(2) 被爆都市のもうひとつの真実
第4章 チェルノブイリの真実
(1) 事故の概要
(2) チェルノブイリの教訓
資料 ロシア政府報告書『チェルノブイリ事故25年 ロシアにおけるその影響と後遺症の克服についての総括および展望 1986〜2011』より、最終章「結論」
第5章 放射線の「国際基準」とは
(1) 放射線被ばく問題にかかわる国際組織
(2) 被ばくから人々を守るための国際ルール
第6章 福島のいま、そしてこれから
(1) 福島の現状
(2) 飯舘村を訪れる
第7章 非常時における被ばく対策
第8章 「被ばくと発がん」の疑問・不安に答える。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年11月5日
読了日 : 2012年2月18日
本棚登録日 : 2018年11月5日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする