1955年作。
1960年、ルネ・クレマン監督による、アラン・ドロン主演の映画が名作としてすこぶる有名で、「太陽がいっぱい Plein Soleil」というタイトルはこの映画によるもの。小説の原題は「才能あるリプリー氏」という、ちょっとつまらなそうなタイトルである。
犯罪サスペンスもの、ということになる。全体の3分の1辺りで主人公トム・リプリーが殺人を犯して、そこからサスペンス風になる。が、私は何となくこの小説に没入できなかった。主人公の性格が曖昧でとりとめなく思われ、その心の動きに近づくことが難しかったせいだろう。
「犯罪を犯したのちの、追い詰められる切迫感」は、もっとシンプルな描写の松本清張の短編の方が引きずり込まれるような迫力、悪夢感があったのだが、本作はもうちょっと心理描写をきちんとやっているのに、いやそれだけに、その心理がどうも私にはよく把握できなかったのである。
結末は映画のそれとは違う。このトム・リプリーを主人公としてハイスミスは更に何編も長編を書いたらしい。私には特徴の掴みづらい人物であったため、あまり興味を持てないのだが・・・。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文学
- 感想投稿日 : 2023年5月2日
- 読了日 : 2023年5月1日
- 本棚登録日 : 2023年5月1日
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