1492西欧文明の世界支配 (ちくま学芸文庫 ア 31-1)

  • 筑摩書房 (2009年12月9日発売)
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感想 : 9
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1492年、コロンブスがアメリカ大陸を発見した年をひとつのメルクマールとして、ヨーロッパがヨーロッパとなってゆく姿を描き出した歴史書。
まず1492年より前の時代を描出するが、著者は凄い博学、かなり多岐にわたる視点から、簡潔に凝縮した、情報量の多い文体でどんどん史実を列挙していく。
高校程度の世界史の知識しか持たない私のような日本人なら、ちょっとついていけない辛さを感じるだろう。
しかし、ヨーロッパがいよいよイスラムとユダヤ人を排斥し、<大陸=歴史>というヘビーな身体性を獲得してゆく過程が、なかなか面白い。アウシュヴィッツに限らず、ユダヤ人は主に宗教的な理由から、さんざんに殺戮されてきたのだ。こともなげに。
殺戮と言えば、1492年よりあと、いよいよアメリカ大陸に乗り出したヨーロッパ人の壮絶な冷血ぶりが凄い。独自の大文明であったアステカ、マヤをあっというまに滅ぼし、何百万、何千万という先住民を皆殺しにしていくのである。
しかもそういった「蛮行」が、キリスト教の威光によって野蛮人を清めるための正義として語られることになる。
ジャック・アタリの筆致はクールなので、歴史的事実をマシンガンのように浴びせかけてくる以外、つよい主張はあまりしてこない。けれども、それまでは中国が世界一の権威であった時代から一転、イスラム-ユダヤを排斥して自己を「キリスト教」として純化し、アメリカ大陸その他の「世界支配」へと踊り出していくという力動は強烈である。
もう少し私が世界史、とりわけヨーロッパの歴史について予備知識があったら、この本はもっと面白かったろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史・宗教・地理
感想投稿日 : 2012年3月21日
読了日 : 2012年3月21日
本棚登録日 : 2012年3月21日

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