真言宗等の日本密教やチベット仏教について平易に解説しており、入門書としてなかなか良い本ではないだろうか。
5世紀頃にインドで密教は生まれたらしいが、それは性的ヨーガのようなものも含む神秘的ないし呪術的な傾向を有する後発の宗派であり、13世紀には仏教もろとも、インドでは滅びてしまう。
密教はその後チベットで発展するが、日本にはもちろん中国を経由して伝わったのである。
この本で内容をざっと見てみると、やはり密教は秘儀的あるいは神秘主義的、オカルト的な面が強い。曼荼羅とか、数や分類(これはブッダの原始仏教にも見られたが)、真言といった要素、さらには超能力的なものや誰かに呪いをかけるような呪術のようなものまで飛び出す。
修験道もふくめ、密教は、こんにちのオカルト趣味にとって格好のネタである。だから、マンガにもその片鱗が出てきたりする。
とはいっても、私はそのような「迷信」を批判しない。科学主義敵世界観の支配のもとにあってなお、呪術は現在の文明でも息づいており、それは民俗学的な現象と呼ぶべきものだ。人間のこころにとっての必然性があるからこそ、そのような民俗が持続するのである。
密教はもちろん「宗教」なのだが、民俗的信仰(道教の諸神とも結びついたようだ)とも合体した混成的文化というふうに見える。その意味で、なかなか興味深いものがある。
空海などについても、いずれ読んでみたいと思っている。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史・宗教・地理
- 感想投稿日 : 2012年11月28日
- 読了日 : 2012年11月28日
- 本棚登録日 : 2012年11月28日
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