私は「法」についてこれまであまり突き詰めて考えたことが無かった。せいぜい、それは制度のなかに生じるものだから、権力作用の一形式くらいにしか考えていなかった。
けれども、著者ハートは「法とは権威に支えられた強制力をもつ命令である」という従来の定説を徹底的に批判する。
本書はそこから始まって極めて真摯に諸問題を検討し、「法」を「哲学」してみせる。
法学自体が私の普段の興味の対象外でもあるし、これを読んでもすっきりしないところも残る。立法府よりも司法つまり裁判所の力のほうがこの法哲学にとっては重要であるというように話は展開されるが、その辺もすっきりと同意しきれない。しかし理解しきれなかった部分は、私の考えがまだ足りなかったせいだろう。
法というと、カフカの「城」や「審判」に出現するような、それ自体に条理性のない・しかし誰も決して抗い得ないような、反=人間的な何かとしてのイメージが強い。だがそれはあくまでもイメージであって、「法」の複雑怪奇な機能は文学によっては解明しきることができない。
ハートが提起した「法」にまつわる諸問題は、さらに考えを深めていく価値がありそうだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
哲学・思想
- 感想投稿日 : 2015年1月13日
- 読了日 : 2015年1月12日
- 本棚登録日 : 2015年1月12日
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