眼と精神

  • みすず書房 (1966年12月1日発売)
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感想 : 12
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みすず書房のこの本に収められている「幼児の対人関係」は、同じ出版社の『メルロ=ポンティ・コレクション3巻』に入っている。そのためこの本を読むのが遅れたのだが、『メルロ=ポンティ・コレクション』シリーズを集めると、既に持っている『シーニュ』所収の文章とかなり重複してしまう。
メルロ=ポンティの生前出版された最後の論文「眼と精神」をやはり読みたかったので、結局この本を買うことにした。
非常におもしろい本である。
最後の「眼と精神」を除く3つの文章は、講義録ないし講演の内容。
最初の「人間の科学と現象学」はフッサールを論じたもので、なかなか難しい。というのは、私がフッサールをきちんと理解していないからだ。この巻頭の文章が難しいと感じたら、ここは読み飛ばしていいと思う。
次の「幼児と対人関係」は、再読になるが、心理学に興味のある人なら間違いなく、抜群に面白いはずだ。フレンケル=ブランズウィック夫人とか、ヴァロンとか、現在の日本では翻訳を読むことの出来ない心理学者が登場するが、この文章を読めば大体その主旨はわかる。
「他人知覚」が幼児において得られる過程、自己の身体像の獲得など、実に興味深い。鏡像論ではラカンの名も出てくるが、2人の親交はこのとき既に始まっていたのだろうか。
「哲学をたたえて」ではベルクソンの読解が試みられるが、それより最後のソクラテスに関する論述が面白かった。
肝心の「眼と精神」、これは遺稿『見えるものと見えざるもの』よりも当然先に読んでおくべきものだったが、私は逆になってしまった。
知覚の中でもやたら優位に立つと思われる視覚という問題系から、メルロ=ポンティはセザンヌなどの絵画の領域に関心を深めていくのだが、この文章ではクレーなどについても論じられている。
この晩年のメルロ=ポンティの思想はなかなかに難しい。特に最後の方、「存在の裂開」という概念が出てくるあたり、あまり理解できなかったように思う。
それでも目もくらむような知の進展を感じ取ることができた。わからなかった部分は、後日また読み返してみればよいのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学・思想
感想投稿日 : 2011年9月3日
読了日 : 2011年9月3日
本棚登録日 : 2011年9月3日

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