日本でいちばん大切にしたい会社

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  • あさ出版 (2008年3月21日発売)
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「日本にはこんなすばらしい企業があったのか!」
思わずそう唸ってしまいそうな、5つの会社を紹介してくれる。
そのうちの1社である、中村ブレイス工業はカンブリア宮殿でも取り上げられていたので、ご存じの方も多いかもしれない。

一般的に、大きく賞賛され、取り上げられるのは売上高や営業利益が高い企業や、業界で独占的地位を得ている企業がほとんど。
そんな資本至上主義的なものの見方とは一線を画した取材を続け、常に「よい経営のありかた」を全国で説いてまわっている著者が。特別感銘を受けた企業をいくつか紹介しているわけである。
特に涙がでるほど感動したのは、本書で一番はじめに取り上げられている日本理化学工業である。
まず驚きなのが、社員の7割が何らかの障害を持っている人々からなっていることである。

まだひとりの障害者も採用していなかった当時、ある障害者たちが職場体験にやってきた。
まわりがフォローしつづけて、ようやくその期間を終えたわけであるが、最後の日に社員全員が集まって社長に訴えた。
「どうかあの子をウチで働かせてあげてください!足りない部分は私たち全員でフォローしますから!」そう懇願したのである。
しかし・・・いろいろな考慮要素もあり悩み続けていた社長は、ある住職に相談をした。
そうすると、「幸せ」とは、'@人に愛され'A人の役に立ち'B人に必要とされ'C人に感謝されることからである。しかし、'A'B'Cは仕事をすることでのみ得られる幸せである。
そう告げられ、社長は、「はたらく」喜び・幸せを彼らに知ってもらいたいと考え、採用を決めたのである。

イベントを開いたり、金銭的に支援したりするだけでは根本的には癒されない。
「採用・雇用」という側面から、障害を持った人たちを支えようとしているのである。採用を聞いた障害者のご両親は泣いて喜んだそう。

これこそがまさに本当の地域・社会貢献である。
本書に紹介されている企業の共通点であろう。
しかし、これにとどまらないのがすごいところで、
売上高・営業利益という点でも目を見張るものがある。

「不景気だから」「地方だから」などと、外在的理由で言い訳することなしに、
企業なりの工夫を続け、〇〇年連続増益などの偉業を達成しているのである。

なるほど、毎日テレビCMで流れてくるような大企業も尊敬に値するかもしれない。
しかしながら、あまり目立たなくても、利益をあげながらも素晴らしい社会貢献をしている企業がいくつも存在しているのだ。そのような企業の存在を私たちは忘れてはいけないし、賞賛する態度が必要だと思う。

社会・会社を見る目を変えてくれる、そんな一冊。

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かなり感情移入したというか、冷静さを欠いているように思える記述もチラホラ。

著者自身が「大切にしたい会社」が世間で大切にされていない、
もしくは「大切にしたくない会社」が世間で脚光を浴びているなど、
そういう憤りがあるのかも知れません。

それでも、「障害者のような真の弱者・・・」という言い回しには、
何か胸をエグられるような違和感があります。

ところどころ言葉選びに「???」と疑問符がつく箇所がありましたが、
取り上げられている企業についての記述は目頭の熱くなるものが多々あり、
読んで良かったなぁと思いました。

特に、第1部で掲げられている「五人に対する使命と責任」で、

一、 社員とその家族を幸せにする
二、 外注先・下請企業の社員を幸せにする
三、 顧客を幸せにする
四、 地域社会を幸せにし、活性化させる
五、 自然に生まれる株主の幸せ

と述べられていたところは、非常に共感しました。
この順番で、この五人を幸せにするのが、本当の「経営」だということです。

一番良くないのはこういう本を読んで、会社への期待を膨らませ、
勤務先に対して傲慢な態度を取ることだと思います。

僕たちが「理想の会社像」を描くのと同様に、
会社側も「理想の社員像」を描いているはず。

こういう本を読んだら、そういう部分まで思いを巡らせて、
まずは自分の仕事のクオリティを上げることを優先する。
それが、こういう本の正しい読み方ではないかと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 起業
感想投稿日 : 2016年10月13日
読了日 : 2016年10月13日
本棚登録日 : 2016年10月13日

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