前回とは一転して、欧州各国政府が抱える現状の深刻さを強く意識せざるを得なかった。著者は朝日新聞記者のヨーロッパ総局員として現地で見聞きしたことを記してくれている。その地の同業者や市民だけでなく、政府の関係者にまでインタビューしていて視点が一点でないところが面白い。財政危機に苦しむ南欧と、危機が第二のリーマンにならないよう市場の信用回復に躍起になる独仏、EU。著書によればアイルランドでは財政緊縮策の影響は障害者施設まで及んでいるらしい。アイルランドに限らず、どの国でももはや以前のような安穏とした生活は営めないのだろうか。日本はどうだろう。政府債務残高でいえば世界でも1、2を争うほど逼迫しているが、今のところまだそのツケは痛みとして、私たちの多くは感じていないのではないだろうか。しかし近い将来日本もどんな形であれ相応のツケは払わなければならない。そのためにも欧州の現状、日本の現状を直視し政府はそのための政策を先送りにすべきではない。その意味でも新書だけでなくこのような現地の情報は参考になる。将来は、著者のように実際に自分の目と耳で確かめられればと思う。
読書状況:未設定
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2011年10月15日
- 本棚登録日 : 2011年10月15日
みんなの感想をみる