伝統的な新古典派経済学は、ある条件下での経済システムが最適収束点を持つことを保証することはできる。しかし現実の経済システムでの重要な問題、例えばシステムの動揺のような、マクロ的な構造が自律的に生じてくる「創発」現象を、ミクロな意思決定の集積で説明することはできない。
本書は、複雑なシステムの挙動は、「自己組織化」の原理でモデル化できるのではないか、という想定の下で、都市の空間的に不均衡な配置・規模がどのように創発されるか、経済システムの時間軸での挙動がどのように説明されるかの概念提示を試みている。
自己組織化を説明する二つの原理として、「不安定から生じる秩序:気象システムの対流のようなもの」と「ランダムな成長から生じる秩序:べき乗法則」が提案される。大きくみると、空間軸・時間軸それぞれで、世界に観察される不均衡な構造は、相反する二つのポテンシャル関数のせめぎあいで形成されるということだろうか。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
政治・経済・法律・社会
- 感想投稿日 : 2010年11月1日
- 読了日 : 2011年1月19日
- 本棚登録日 : 2010年11月1日
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