14歳の時、少女への暴行殺人容疑をかけられて以来、23年間寄り付かなかった生まれ故郷に、つい、立ち寄ってしまったウーロフ。
待っていたのは自宅で殺されていた父の姿。
主人公は警察官補のエイラ。
ウーロフと同郷で23年前は9歳だったが、地元をよく知るとして捜査に加わった。
当時からから変わらない世間の事件に対する目、
小さな町で起こったことはすぐに広まり、互いにその見方を同調していく。
本当は、それぞれがそれぞれの事情で家庭で抱えている問題があり、それがこの事件を暗くして、探るにつれて醜く暴かれていく。
エイラは、警察官として捜査を進めるうちに23年前の事件に疑問を感じていく。
それは、仕事としてではなく、自分を覆っている、もやもやとしてつかみとれない衣をはがしていきたいという、欲望の表れのように感じる。
二転三転する展開は、予想している暇もないほどで450ページの物語も長くは感じない。
また、北欧ミステリーの「森と湖、夏の白夜と冬の暗さ」は土台となっているものの、他にみられるような社会問題に対する主張はそれほど強くない。
どちらかといえば、小さな集団の中での同調と排他的意識での息苦しさが、この物語を暗くしている。
真相が明るみになったその時、23年前14歳だったウーロフが犯した罪とされたものは、いったいなんだったのか……この事件そのものが違った意味を帯びてくる。
読み終わった後に、ポツリと残った余韻がいい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外ミステリー小説
- 感想投稿日 : 2023年2月3日
- 読了日 : 2023年2月2日
- 本棚登録日 : 2023年1月1日
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