アリーテ姫の冒険

  • 学陽書房 (2001年6月1日発売)
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感想 : 50
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おとぎ話の体裁をとっていながら、実はフェミニズム的な考えを体現するお姫様という、ちょっとしたアイロニーに彩られた話。後書きを読むと、古くからヨーロッパで読み継がれてきた「白雪姫」や「眠り姫」はヒロインが「美しい」という脂質を持っていたために王子様の力を借りて幸せになることができた。これを男性優位社会のひな型ととらえ、逆に女性が自力で幸せをつかむという「おとぎ話」はないのかという要望に応えて生まれたのが本作だということがわかる。

そう、アリーテ姫は決して美しいわけではないけれど「かしこい」姫で、父王は「かしこい姫など嫁の貰い手がない」と叫ぶし、実際にお見合いも失敗する。しかし、悪辣な魔法使いと結婚させられた姫は課せられた無理難題を自力で解決し、魔法使いとその手下は自滅する。

アリーテ姫が持っていた「かしこさ」とは知識だけでなく、絵をかいたり服を作ったりという手仕事の能力+創造性のことで、豊かさを生み出す力とも言えるだろう。反対に王や魔法使いが持っていたのは、暴力的な力と権力、富で、これは何も生み出さない。

型破りなお姫様の話で面白いとは思う。けれども、アリーテ姫はそれまで男性たちがたまたま踏み荒らしていた花畑を修復して幸運を授かっただけようにも見えるし(つまり、花畑を荒らす男性がいなければ姫の所業も成り立たない)、そもそも自力で戦い運命を切り開く姫の話は北欧民話の中にあったりして、決してなかったわけではないのだ。それに、女性=豊穣の神、男性=権力と破滅の神、みたいなステレオタイプなキャラ造形になってしまっていることも気になる。

ただし、小さい子に読み聞かせをしたなら、成長してからのち、勇気づけられる女の子がたくさん出てくると思う。女の子は賢くて強くていいんだよと。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童文学
感想投稿日 : 2017年1月3日
読了日 : 2017年1月3日
本棚登録日 : 2017年1月3日

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