ハーバードの 人の心をつかむ力

  • ダイヤモンド社 (2021年12月15日発売)
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人生を豊かに過ごすためには、自分自身が内から輝くことが大切なのである。そのためにどうすればよいのか?
そんなことを本書は語っているが、個人的感想としては「ごもっともだが、実践が難しい」と感じた。
人は皆、輝ける自分でいたいし、他人に対しても優位でいたい。
「他者と比較する」という競争原理が働く部分もあるが、本書はもう少し「自分磨き」に重点を置いた内容となっている。
(そもそも他者と比較してもしょうがない。所詮、自分は自分でしかないのである)
表題の「EDGE」とは、次の頭文字をいう。
①「Enrich」豊かにする
②「Delight」楽しませる・明るくする
③「Guide」誘導する
④「Effort」努力する
この「EDGE」を意識すれば、他人との付き合い方も上手になり、人生が豊かになるということだ。
もちろんそれは理解できるが、そんな単純な話だろうか。
結局、これらを実践することが一番のハードルだと思うのは、私だけだろうか?
若干理想論に偏っている面が垣間見えた。
確かに書いてあることは「その通り」と思うことが多い。
あくまでも自分を売り込むのではなく、相手を楽しませるという考え方は大事だと思う。
そこにさらにユーモアやジョークがあれば、相手はあなたのことを「気が利く人」と思ってくれるだろう。
他人と、心を許した信頼関係を構築するのは簡単な話ではない。
そもそも気が合う、合わないの相性の問題がある。
しかし人間社会では、相性が合わない人ともそれなりに付き合っていく必要がある。
会社では勝手にチームが組まされるし、住む家だってご近所さんとは出来れば揉め事を起こしたくない。
自分が営業担当であれば、嫌な顧客に対しても商品を売り込まなければならない。
結局、他人のことは変えられないのだから、自分自身を変えていくしかない。
しかしながら、無理をして自分自身を変えてしまうと、メンタル面でも痛んでしまう。
無理をせずに、ほんのちょっとの行動だけで人間関係が改善するならば、大いに効果があると言えるだろう。
まずは自己理解のための分析をするしかないのだが、これが一番難しい。
自分自身の事は当然自分が一番分かっている、と思い込んでいる。
このバイアスを取り払い、もう一度自分の内面と向き合うのは簡単ではない。
メタ認知とか、客観視とか、俯瞰して物事を見るとか様々言われるが、要は同じことである。
まずは「私は何者なのか?」を、あまり真剣に追い込まずに、軽くライトに考えてみればいい。
自分の「強み・弱み」を改めて知ることが大事だと言うが、これも当然だ。
職場のキャリア研修などでも、改めて「自己の強み弱み」を文章を書かされる課題がある。
自分のことを一番分かっていても、改めて内省することで見えてくるものがある。
出来るだけ今までの一方向からの視点でなく、多視点で見つめてみる。
そこからスタートし、その上でEDGEを使って直感力を磨き、本質を見抜くのだという。
これも簡単な話ではない。
私も他者を見た時に「どうしてこの人は、この本質に気付かないのだろう」と感じてしまうことがある。
それでは果たして、自分は本当の本質に気が付いているのか?
この問答は、どこまで考えても正解に辿りつかない。
自分の思う正解は、自分で考える以上、幻想でしかないからだ。
それでも本書を読んで、まずは内省し、EDGEを使って行動を変えてみる。
自分自身は結局他人の鏡であり、そんな自分も少なからず他人に対して何らかの影響を与えていく。
少なからず、所詮人間とはそういう生物なのかもしれない。
(2023/8/10木)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年9月3日
読了日 : 2023年8月10日
本棚登録日 : 2023年8月10日

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