思考を哲学する

著者 :
  • ミネルヴァ書房 (2022年4月25日発売)
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感想 : 9
4

哲学=知的探求活動全般、学問全般を指す。

正直1ページ目を開いた時、あまりの文字の小ささとその量から読むのをためらったが、
”思考の標準化”
”グローバル化とは多様化ならぬ一様化をもたらし、あらゆるものの標準化をもたらす”
という一文を見て、これは時間をかけてじっくりと読んでいこうと思った。

結論から言うと、答えが無く難しい内容を仰々しい難しい言葉を用いずに話し言葉で書かれているため、思いのほかスラスラと読める。ただしスラスラと読めるからといって一回で全てを理解できたわけではないので、繰り返し読んでいきたい。

読んでいてふと思ったこと
大学生を例に考えてみる。少し前にSNSで見かけたが、まじめな大学で学問のみを突き詰めた人よりも、ある程度サークル活動や人間関係などを活発にしていた人の方が、企業に採用されやすいのだという。
それは大学での知識の獲得が実は、知識の標準化の元になり、対してサークル活動などの人間関係の構築が結果として個性(多様性)の獲得につながるからではないだろうか?

標準化について”グローバルスタンダード”という言葉も使ってその危険性を述べている。
ようは標準という言葉に安心して思考停止していないか?ということであるが、だからといって天邪鬼になれといっているわけではない。あくまでも考えることを止めてはいけないと一貫していっている。
またそうのような思考の停止(放棄)がカンの衰弱、や一種の洗脳状態ではないのかと述べられていたことが興味深かった。

終盤のリサイクル等についての考察が、なんでもエネルギーや効率についての話にすり替わっており、そこはやや疑問に感じるところではあった。エネルギーの観点では確かにそうなのだろうが、それは資源が無限に使えることが前提なので、私はリサイクルを行うこと自体は有効ではあると考える。(効率については同意だが)

また、ネットショッピングの商品の推薦(おすすめ)についての考察が興味深かった。もちろんそれによって新たな出会いを得ることができるが、それこそが何者かに誘導されている結果なのだといわれれば、確かにその可能性は否めない。

話が少しそれるが、人類が皆情報を発信できるようになった現在、他人の主義主張を容易に知ることができ、その中で、自分が今考えていることは、本当に自身で考えぬいたものだと自信をもっていえるだろうか?変に他者の思想が混じったりしたりしていないだろうか?もちろん影響を受けることは必ずしも悪いことではないが、そういうことも含めてきちんと自身の在り方を考えていきたい。

最後に作中で印象に残った文をもう一つ

考えろ!もっともらしい言葉に騙されてはならない

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス本
感想投稿日 : 2022年6月2日
読了日 : 2022年6月1日
本棚登録日 : 2022年6月2日

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