僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか? (星海社新書)

著者 :
  • 講談社 (2012年4月26日発売)
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ダメ。全然ダメ。そもそもの課題認識から間違っている。多くの人が感じている所得に関する不満は、著者の言うところの「多少のプラスアルファ」にあるのであって、何も資本家と比較して自分の所得が低いと嘆く人はいない。

第1章はいわゆる生活給の考え方。戦後日本の労働問題をかじった人なら知っている話。ただし現在は都合の良いところだけ成果配分原則を採用するようになってきて、管理職の給与から生活補助的な手当てがなくなったり、賞与だけでなく給与にまで成果(考課)を反映させているのは問題だ。
第2章は労働価値説と剰余価値の話。150年も前の資本論に終始した説明で、限界効用理論を踏まえた議論になっていない。とても現代の経済社会に当てはまるとは思えない。
第3章は上記を踏まえた『働き方指南』。とは言っても具体的な提言は何もない。価値と使用価値を同時に高めなさい、と言う身も蓋もない話。それをどうやってやるかが知りたいんですけど。。。
第4章は自己内利益という概念から、売上(収入)を上げるのではなく費用を下げましょうという提案。これには一理あって、年収1000万円でもすぐにその生活レベルに慣れてしまうから収入を増やすのは意味がないというのは納得。しかしここでも具体策なし。いくら何でも次の章ではその秘伝が開示されるぞ、と期待しつつ次章へ。
第5章でようやく解決策。やはり費用を下げましょう、と来た。その中身はと言うと。。。興味を持てる仕事に就け?!そんなことできるなら悩んでないわい。どんな仕事でも自分次第で興味を持つことはできる、という有難い精神論ですが、こういう言い方こそ資本家が搾取する時の常套手段でしょう。
また日々の努力が蓄積されて投資になるような仕事を選べとも。これも難しいわな。特にもう定職についている人には。
第6章、もうどうでもいい感じもする。蓄積した能力が長く活かせる変化の遅い業界を選べというが、そういう斜陽産業でどうやって満足できる収入を得よというのか?製鉄や電力のような過去からタップリ資本を蓄積してきた業界は特殊であって就職も難しい。それ以外のスローな業界は毎月給料が払われるかどうかも怪しいのが現実だ。

とにかく価値はあるかも知れないけど使用価値の乏しい本でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会時事
感想投稿日 : 2017年4月23日
読了日 : 2017年4月23日
本棚登録日 : 2017年4月23日

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