神の見えざる手が必ずしも働かないとか、市場は効率的でも公正でもないと言うのは直観的に理解できるが、本書では史実やデータに基づき詳細に分析しており、より深い理解を得ることができる。
市場原理とは「持てる者」が益々リッチになっていく制度であり、そこには一定の規制が必要だと言うのが著者の主張である。それが真反対に振れたのがアメリカの「証券化」資本主義であり、リーマンショックで揺り戻しがあったのは当然だとの分析は納得できるものである。
ではどうしたら良いのか、という処方箋になると途端に説得力を失う。曰く、①投機の規制とモラルハザードの抑制、②通貨・国際金融制度への規制強化、③ステークホルダー社会の実現、④セーフティネットの拡充、⑤自由放任主義との決別の5項目の対策が必要とあるが、いずれも「持てる者 」にとって不利益な方向であり、「持てる者」が社会制度を決めている現状ではこれらの実現は絶望的である。まさに絵に描いた餅だ。
現状を大きく変えるには「持たざる者」が革命を起こすしかないのかも知れない。そうだとしても旧ソ連や北朝鮮が行き詰った通り、そのような社会が理想的だとは到底言えず、結局は市場原理主義と社会主義をうまくバランスさせる、という何とも面白くない結論になるのだろうか?
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
経済経営
- 感想投稿日 : 2015年1月21日
- 読了日 : 2015年1月18日
- 本棚登録日 : 2015年1月25日
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