スクランブル (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2000年7月19日発売)
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感想 : 71

1995年1月。結婚披露宴会場。
高校時代を同じ新国女子学園文芸部で過ごした私たち6名がここに顔を合わせた。エスカレーター式の学校で、高等部からの編入組《アウター》として阻害されてきた 彦坂夏見、貝原マナミ、五十嵐洋子、宇佐春美。そしてエスカレーター組でありながらも馴染めなかった 沢渡静子、飛鳥しのぶ。
招待席で、そして金屏風の前で、彼女らはそれぞれ何故か15年前の学生時代を思い出していた。15年前に学校のシャワー室で17歳の女性の死体が発見された、それからの数ヶ月間の日々を―――。
『スクランブル』(夏見):死体発見のざわめきの中、宇佐が盗難事件の犯人として疑われたこと。
『ボイルド』(マナミ):クラスの中心的女生徒が文芸部員たちの目の前で階段から転がり落ちたこと。
『サニーサイド・アップ』(洋子):スポーツ大会の最中、養護室で後輩が薬物入りお茶を飲まされたこと。
『ココット』(静子):一緒に図書当番をしたのを最後に、同級生が私服姿でひき逃げにああって死亡したこと。
『フライド』(飛鳥):修学旅行直前、級友達が班分けでもめている中で1人が「エンジェルさま」で妙な予言を言い出したこと。
『オムレット』(宇佐):図書館で1冊の本が紛失し、文化祭での文芸部の展示内容が合致したことから文芸部員の中に犯人がいると疑われたこと。
1980年、そしてエピソードとして1995年の彼女らの現在を間に挿入し1つの流れとなった連作短編集。

連作短編というのは若竹さんのお得意技ではありますが、確かに巻末解説(佐々木譲氏)のとおりこの作品は当てはまらないかもしれませんねぇ。17歳の少女(しかも生徒ではない)の死が大きな軸として存在している以上、長編…なのかなぁ?短編として分けてしまうと少々内容が薄くなってしまう面もあるし…。
舞台が女子高で、好奇心旺盛な女子生徒が推理しようとする、というとつい「優しい密室」(栗本薫)を思い出してしまうのですが、ちょっと雰囲気が違います。大人への反発、自尊心、不安といった学生時代のゆらぎ(…というかイタさ/苦笑)は同じなんですが、この6人の間での友情や尊敬や苛立ち…そんなものまでがとても露にされている。”毒”が強い若竹さんですが、今回は懐かしいイタさ、かな?愛すべきともいえるくらいに感じられます。…まぁ、そう思えるっていうのは私がその時期を過ぎてるからなのかもしれませんが。 真っ只中な人にはちょっと苦しいかもね;

各章のタイトルはすべて卵の調理方法です。卵=半熟を連想しました。15年前の彼女たちになぞらえてるのかな…?それともラストにあるように『これから殻を破る』という意味合いなのかしら。
久しぶりにもう一度、いや、何度も読みたいと思った作品です。オススメ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 若竹七海
感想投稿日 : 2012年6月10日
読了日 : 2006年5月16日
本棚登録日 : 2012年6月10日

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