この夏のこともどうせ忘れる (ポプラ文庫ピュアフル ふ 4-7)

著者 :
  • ポプラ社 (2019年7月4日発売)
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本棚登録 : 828
感想 : 49
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 「青春小説」とされているけど、少し違う気がする。かといって恋愛小説でも、ミステリー小説でも、ホラー小説でもない。不思議な短編集。
 登場人物は、みんな何か抱えていて、夏がそれを解放してくれるような、悪い方向に助長するような・・・。かといって読後感が悪いわけでもない。

 一番のお気に入りは、「生き残り」。
 
 以下ネタバレを含むが、野球部の虐待的しごきといじめにも耐えた「篠くん」を高校生活最後の期間限定の彼氏に選んだ「梨奈」。ところが、篠くんは継父に虐待されていた。それへの同情もあって篠くんを本気で好きになる梨奈。だが、実は本人が気づいていないだけで、梨奈もシングルマザーの母親にネグレクトされてる。そんな二人が結ばれて、夏の最後に逃避行をしようと試みる。二人には幸せになってほしいが、梨奈は「この夏が終わっても、私はまだ生きられるのかしら」と思う。このラストで、切ないというか、うすら寒さを覚えるというか、何とも言えない気持ちになった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 読もうよ!
感想投稿日 : 2023年12月6日
読了日 : 2023年12月4日
本棚登録日 : 2023年12月6日

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