一千一秒物語 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1969年12月29日発売)
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本棚登録 : 2519
感想 : 174
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解説によると、稲垣足穂は飛行家になりたかったらしい。空にあこがれ、雲の間を複葉機で自在に飛び回る夢は叶わなかったが、星や月や天空と、自分の心との距離とは、自在な空想力によって近づいたようだ。
 
――夜更けの街の上に星がきれいであった
たれもいなかったので 塀の上から星を三つ取った 
-家へ帰ってポケットの中をしらべると 星はこなごなにくだけていた
Aという人がその粉をたねにして 翌日パンを三つこしらえた 
(「一千一秒物語」より)――
 
なぜ月は天空を回るのか?なぜ星はこんなにたくさん夜空に見えるのか?人は知識として聞いて、わかったフリをしているだけ。

月がある、星がある、その存在だけで不思議な現象なのだから。
ほうき星がビールびんの中に入ったり、お月様を食べてみたりといった作中の現象も、現実世界では未だ遭遇したことはないかもしれないけど、不思議な世界への扉は、ある日突然自分にだけ開くかもしれない。
自分さえ心を空に向かって開いてさえいれば、ね。
…そんな気分にさせてくれる本です。
(2008/7/14)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年11月8日
読了日 : 2008年7月14日
本棚登録日 : 2015年11月8日

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