ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質

  • ダイヤモンド社 (2009年6月19日発売)
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世の中の白鳥はすべて白いと思われてた。しかしある日、黒い白鳥が見つかってから、白鳥が白いことは自明ではなくなってしまった。リーマンショックが起こってから、経済がずっと安定であり続けるという幻想は崩壊してしまった。9.11のテロが起こってから、平和を維持し続けることが困難であることがわかってしまった。本書は、そんな黒い白鳥=ブラック・スワン的な事象に関する本だ。
ブラック・スワンは以下の3つの特徴を備えている。第一に異常であることだ。過去の事実から考えれば、そんなことが起きるとは考えられないこと。第二に、とてお大きな衝撃があること。そして第三に、異常であるにもかかわらず、私たち人間に生まれついての性質で、それが起こってから適当な説明をでっちあげて筋道をつけたり、予測が可能だったことにしてしまったりすることだ。
このようなブラック・スワン的な事象は人類、そして自分に大きな影響を及ぼす。本書を読むと、ブラック・スワン的な事象とそうでない事象の違い、管理可能なリスクと不可能なリスクの違い、人間の欠陥などについてより詳細に認識できるようになる。
私たちは非常に不確実な世界でも、制限された情報をもとに意思決定をして生きていかなければならない。そんな世界を生き抜くのに、役に立つ一冊だ。

印象に残った点。
・黒い白鳥の論理では、わかっていることよりわからないことのほうがずっと大事だ。
・治療より予防のほうがいいのは誰でも知っている。でも、予防のために何かをして高く評価されることはあまりない。
・何かの現象を調べようというとき、やり方が二つある。一つは異常なものを切り捨てて「普通」なものに焦点を当てるやり方だ。...二つ目のやり方では、...まず極端な場合を調べないといけないと考える。...私は普通の場合のことはあまり気にしない。友だちの性格や道徳観や品格を知りたかったら、みないといけないのはその人が厳しい環境でどうするかであって、薔薇色の光に包まれた普通の日常生活でどうするかではない。
・講釈の誤りは、連なった事実を見ると、何かの説明を織り込まずにはいられない私たちの習性に呼び名をつけたものだ。
・芸術の追求も科学の追求も、ものごとの次元を減らして秩序を持ち込みたいという私たちの欲求に応えて生まれた。
・講釈の誤りという病を避けるには、物語よりも実験を、歴史よりも経験を、理論よりも臨床的知識を重んじることだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月29日
読了日 : 2021年9月30日
本棚登録日 : 2023年8月29日

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