しろうさぎとりんごの木

著者 :
  • 文渓堂 (2013年10月10日発売)
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本棚登録 : 464
感想 : 61

◆つい先日、ストーリーテリングの勉強会で〈ひとり親家庭の子どもの前で語ってはならないおはなしはあるか〉という話題が出たばかりだったので…。読むタイミングがちょっと悪かったです。
◆冒頭の「ちいさないえでしたけれど、しろうさぎにとってひつようなものは、なんでもそろっていました」…それは、お父さんとお母さんと、お父さんが作ってくれたベッドにお母さんが作ってくれたぬいぐるみ。その「ひつようなもの」という言葉の強さに絶句しました。そしてラストも。「このいえには、しろうさぎにひつようなものはぜんぶそろっているからです。だいすきなおかあさんもおとうさんも、あかいクレヨンも」…。またしても「ひつよう」の念押し…。傷つく子どもがいるような気がして、この絵本を無条件に愛することができませんでした。「ひつよう」という強い言葉がなかったら、スルーできたかもしれません。ここに描かれた幸せは、平凡というよりも完璧で眩しすぎました。
◆そんなネガティブな気持ちを引きずっての読書でしたが、見開きに大きく描かれたりんごの実の赤ちゃんを見つける場面には心を洗われる思いがしました。しろうさぎの子の目になってその景色に出会ったように思いました(いつもわたしは、人間社会の小さな事情なんて消し飛ばしてしまう力が自然にあるのを感じています)。
◆残念ながらバイアスのかかった読書になってしまいました。そんな事情を推し量らない子どものうちに読んでみたかったです。

※ちなみに、そのストーリーテリングの勉強会では、おかあさん・おとうさん大好き、が主題のお話について、聞き手に親を失ったばかりの子(園児~小2)がいる場合には避けた方がよいだろう、中学年以上の年齢の子どもはお話として受け止められるのではないか…というところに落ち着きました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2015年4月24日
読了日 : 2015年4月24日
本棚登録日 : 2015年4月24日

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