蜩ノ記

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  • 祥伝社 (2011年10月26日発売)
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「この世に生を受けるひとは数えきれぬほどおりますが、すべてのひとが縁によって結ばれているわけではございませぬ。縁で結ばれるとは、生きていくうえの支えになるおいうことかと思います」
「あのように美しい景色を目にいたしますと、自らと縁のあるひともこの景色を眺めているのではないか、と思うだけで心がなごむものです。。生きていく支えとは、そのようなものだと思うております。」

という場面が印象的でした。

そして最後、秋谷が兵右衛門を殴りつけて去る場面。
兵右衛門が秋谷が切腹することを受け入れた気持ちを同じ武士として理解していたこと。
いずれ、息子が立ち向かってくることを、まぶしいものを見るまなざしで、楽しみにしていること。

そしてもう一つ。
秋谷が慶仙和尚を最後に訪ねたとき。
未練はないといった秋谷に「まだ、覚悟が足らぬようじゃ」
「未練がないと申すは、この世に残る者の心を気遣うてはおらぬと言っておるのに等しい。この世をいとしい、去りとうない、と思うて逝かねば、残された者が行き暮れよう」

さすが和尚様。未練を残さないのが武士という者かも知れないけれど、人としてはそうとばかりは言えないでしょう、ということかな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2012年
感想投稿日 : 2012年7月29日
読了日 : 2012年7月29日
本棚登録日 : 2012年7月29日

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