文明の生態史観 (中公文庫 M 98)

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  • 中央公論新社 (1974年9月10日発売)
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感想 : 8
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梅棹忠夫氏の名を世に広めたのがこの「文明の生態史観」です。最初に発表されたのは1950年代ですが、現代社会にも大きな示唆を与えています。

 日本はアジアの一国という認識は今でもありますが、世界中を巡り歩いた見識を基に梅棹氏はアジアというカテゴリーに意味はないと述べています。梅棹氏の説く「文明の平行進化論」は今後の世の中の変化を考える上でも重要な視点かと思います。

 本書を読めば、世界で起きる変化に敏感になり、いろんな疑問がわいてきます。

「BRICsのうち中国、インド、ロシアはいずれも第二地域の旧帝国だが、第二地域は新たな段階へと移行するのか?それとも歴史は繰り返すのか?」

「旧帝国のうち地中海・イスラム世界だけはまとまっていないが、他の第二地域と何か違う要素があるのだろうか?それとも時間軸が遅れているだけか?」

「日本を含む第一地域では教育の普及により為政者意識をもつ知識人が誕生し。ITの発達した現代ではこのアマチュア政治家層が力を持ち始めている。同じことが新興国で起きたときに何が起きるだろうか?」

 本書の面白さのポイントは巧みなアナロジーにあります。「比較宗教論への方法論的おぼえがき」では宗教と病気の対比で説明しています。この小論は思考のアプローチだけしか書かれていませんが、続きを読みたくなること請け合いです。

 梅棹氏の「文明の生態史観」はユーラシア大陸の理論ですが、発表後も多くの研究者によって幅広く展開されていきました。大陸をとりまく海洋の重要性を説いたのが、川勝平太氏です。「文明の生態史観はいま」という本の中で梅棹氏と川勝氏の対談が掲載されていますので、興味のある方はこちらもお勧めします。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2011年7月13日
読了日 : 2011年7月13日
本棚登録日 : 2011年7月13日

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