私家版・ユダヤ文化論 (文春新書 519)

著者 :
  • 文藝春秋 (2006年7月20日発売)
3.85
  • (106)
  • (120)
  • (133)
  • (8)
  • (4)
本棚登録 : 1276
感想 : 114
4

面白いっ!

哲学界の翁、内田樹による
「私家版」ユダヤ文化、ユダヤ人論。

卓越した知力と教養を身につけ、
政界、財界、芸術界とありとあらゆる
世界でトップに栄えるユダヤ人。

しかしその歴史は、
受難と迫害の歴史である。

そもそも「ユダヤ人」とは何者か。
なにゆえに彼らは、これほどの知性を身に着けたのか。


-ユダヤ人たちが民族的な規模で開発することに成功したのは、「自分が現在用いている判断枠組みそのものを懐疑する力と『私はついに私でしかない』という自己繋縛性を不快に感じる感受性」である-

-「選びは特権から構成されているものではない。それは有責性によって構成されている」-

-ユダヤ人は自分がユダヤ人であることを否定するわずかによけいな身ぶりによって、自分がユダヤ人であることを暴露する存在として構造化されている-

-『たしかに、おまえは一個の自我である。たしかに、おまえは始原であり、自由である。しかし自由であるからといって、おまえは絶対的始原であるわけではない。おまえは多くの事物、多くの人間たちに遅れて到来した。おまえはただ自由であるというだけではなく、おまえの自由を超えたところでそれらと結びついている。おまえは万人に対して有責である。だから、おまえの自由は同時におまえの他者に対する友愛なのだ。』-


「ユダヤ人」をテーマに人間を、神を、宗教を、哲学を
鋭くえぐり出す内田樹の傑作。

決して読みやすい本ではないが、
構造主義の基本を抑えている方であれば
ぜひぜひ手にとって欲しい一冊。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アカデミック
感想投稿日 : 2012年10月10日
読了日 : 2012年10月10日
本棚登録日 : 2012年10月10日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする