リリイ・シュシュのすべて (角川文庫 い 42-5)

  • KADOKAWA (2004年2月25日発売)
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感想 : 254
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我が家の積読本は、ブックカバーをかけています。
通勤出発前にパッと手にとった本がこちらでした。
たぶん10年以上本棚に寝かしていた一冊…。

あらすじを全く知らずに読み進めていて…
あれ、これ…なんか不穏…と思い、ネットで検索。
(結末知って読んでも大丈夫な人なのです)

検索結果に、「トラウマになる」「鬱展開」とか書かれてしましたので、心して読みました。
本当は精神状態が、あまりよくなかったので、
読むのをやめたかったのですが、
続きが気になって読む手がとまりませんでした。苦笑

カリスマ的な存在の歌姫、リリイ・シュシュ。
好意、ファン、推し、癒し、高貴、崇拝…

リリイ・シュシュという人物を通して、
ネットの掲示板「リリイホリック」に集う人たち。

サティ、くま、ネヴィラ71、ねんね、鉄人29号、あみか、トムトム、カエル、ゆみこ、るか…そしてパスカル。

顔も名前も年齢も性格も職業も何も知らない。
リリイ・シュシュだけが、唯一。

実は、過去に同様の掲示板が存在していた。
更新が止まってしまったサイト「リリイフィリア」。
なぜ、突然更新が止まってしまったのか。
あの日、本当は何があったのか。
リリイのライブ後、何があったのか。

ファンの自殺、
スタッフによる暴行傷害事件、
ライブハウスで起きた殺人事件。

リリイの周りには、
強い希望、光が存在するのと同じぐらいの、
絶望と暗闇が存在する。

誰かを救うということ。
道しるべになるということ。
救いって何だろう。

蓮見雄一、星野修介、津田詩織、久野陽子

田舎町の中学校。閉鎖された町、学校、空間。
いじめ、万引き、レイプ、援助交際…
学校の先生ですら、生徒の顔色を窺い、媚びへつらう。
誰も助けてくれない。
解決できない。
終わらない。
逃げられない。

ある時期を境に、星野からイジメの標的にされた雄一。
辛い現実、日常を救ってくれたのはリリイの歌だった。
とにかく語られる日常が過酷すぎました。
家庭も教師も大人もあてにならない。
頼りにならない。
助け合えるのは、虐げられている者同士。
それだって、本当に救ってやることはできない。
たった一つだけの居場所。
それがリリアフィリア。
あの日、ライブで真実を知るまでは。
誰も助けてくれない現実に、さらに突きつけられる真実。

10代のころ読んでたら、どう思ってたかなあ。
学生時代からかなり遠ざかった30代後半。
それでも。
読み切った後は、何とも言えない気持ちになりました。
「そっかあ、そうなのかあ。」って。
胸が痛くて苦しくなりました。

私はトラウマにも鬱展開とか
気持ち的に落ちたりはしませんでした。
事前にネタバレしてたかもですが。苦笑

ネットの世界は見えない分良いこともあれば残酷なこともあるし、学校生活が苦しく感じる瞬間があることは、今も昔も変わらないのかも、と思いました。

唯一のリリイが実態として姿を現さないことが、
ある意味の救いなのかもしれない。

私はエーテルを感じることはできない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 岩井俊二
感想投稿日 : 2023年1月28日
読了日 : 2023年1月18日
本棚登録日 : 2023年1月18日

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