5/27再鑑賞。
ピュアですね。いやー、ピュアです。
この脚本を毛の生えた大人が書いたというのが奇跡ですよ。
子どもの頃に感じた、えも言われぬ恐怖心や手を伸ばしたくなる好奇心、オトナへの憧れを、スペイン内戦後の国内に漂う閉塞感とそれに伴う家族間のすれ違いを絡めながら描いている。
ポエティックな映像の断片にイエロー・ブラック・ネイビー・グレーといったカラーが鮮明に映し出される。それはまるで我々が幼少期の記憶を振り返った時と同じように刹那的でアヤウイモノ。
子どもの頃のまっすぐで純粋な気持ちを思い出す。そんなノスタルジーがなんだか心地良い。
主人公のアナがとにかくかわいい。
いつでもおねえちゃんのイサベルの側にいて、わからないことはすぐにおねえちゃんに相談。疑うことを知らない、そのまっすぐで大きな瞳はいつもまばゆい光を放っている。
そんな妹の無垢な姿に対しておねえちゃんのイサベルはオマセな年頃。
健気な妹をからかいつつ、自身は女の自分を意識し始めている。ネコの首を絞めるシーンから、そのネコに引っ掻かれて出た指の血を唇に塗り付けるシーンは大人顔負けのセクシーショット。と思えば、自分の"嘘"が次第に現実味を帯びてきたことに怖くなってふとんを頭からかぶったりと。
こんな娘が欲しい。本当に2人ともかわいい。
蜂蜜色の灯り、窓格子の蜂の巣模様、そしてその格子を隔てた"内"と"外"の世界。
フランケンシュタインと精霊。精霊と足跡。足跡と負傷兵。殺された負傷兵と殺されたフランケンシュタイン。殺されたフランケンシュタインと生きた精霊。
映画の少女とアナ。死んだ少女と生きたアナ。
数々のメタファーと象徴が行き交いながら物語は紡ぎ出される。
最後、母親のテレサがアナの失踪を機に家庭に気持ちのよりを戻すシーンはとても良かった。あのシーンは作品上、それ以上に大きな意味を持っているように感じる。
邦題は原題とはニュアンスが少し異なるが、なかなか良いネーミングだと思う。心に深く沁み入る映画。アナの大きな黒い瞳に何か救われる感じがした。
- 感想投稿日 : 2012年5月27日
- 読了日 : 2012年3月28日
- 本棚登録日 : 2012年5月27日
みんなの感想をみる