怪獣小説ではないけれど、読みました。切通理作著『本多猪四郎 無冠の巨匠』。怪獣、特撮映画好きならばこの人の名前を知らない人は居ません。怪奇幻想作家の香山滋によるプロット「G作品」を元に映画作品として脚本を書き、フィルムに写し込んで『ゴジラ』として銀幕に登場させた生みの親の「お父さん」的存在である本多猪四郎監督。その半生と、監督の『ひととなり』が最も顕著に見受けられる作品をピックアップして検証した記事は名著『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち 増補新装版』を世に送り出した切通理作の綿密な取材と鋭い観察眼で構成した映画監督本多猪四郎の評伝。
戦争を生きぬき、戦後の混乱と復興という激しく動く日本の昭和という時代のなかで、科学に対して非常に強い探究心を持ち、科学万能のユートピアを夢見る人物像は当時としては映画監督として異色な存在だったに違いない。しかし、勧善懲悪なドラマの中でも「盗人にも三分の理」を貫くその演出手腕は、戦争という苦境を経てなお映画製作が生きがいとした本多監督の為人の成せる技であり、その眼差しで描かれる故に重圧なストーリーの中にも独特の優しさが漂う作風として今なお愛され続けていると伝える切通の文章は実に巧みに心に届く。
秋の夜長、この本を片手に本多作品を観かえすのもまた一興です。٩(`・ω・´)و"
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ソフトカバー
- 感想投稿日 : 2015年10月3日
- 読了日 : 2015年10月4日
- 本棚登録日 : 2015年3月27日
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